平成19年度日本材料学会木質材料部門委員会業績賞
授賞理由


授賞対象者 :北見工業大学大学院物質工学専攻 鈴木京子氏

授賞研究課題:ニッケル触媒炭化による機能性木質炭素の製造

 
鈴木氏はニッケル触媒炭化法が導電性と高分子吸着能を備えた木炭(結晶性メソ孔炭素)を効率よく製造できる手段であることを実証し、実用面での展開を図った。すなわち、木質炭素の850〜900℃における結晶化が直径約4 nmのメソ孔の出現を伴うことを発見し、結晶の生成とメソ孔発達の間の密接な関係を見出し、この結晶性メソ孔炭素の生成が一段炭化(室温→900℃)よりも実用性に優れた二段炭化(500℃→900℃)で有利であることを明らかにした。また、結晶性メソ孔炭素が約50 nmのナノカーボンからなることを明らかにし、結晶化が4 nmメソ孔を選択的に発達させる機構を提案した。さらに同じ炭化条件でリグニン誘導体からも結晶性メソ孔炭素が製造でき、微粉砕-酸洗浄という金属回収を兼ねた後処理が機能の点で有利となることを見出した。その成果は過去3年間に、“材料”を含む学会誌に発表するとともに、国際学会でも発表しており、木材の炭素材料としての新規応用分野を開拓した点で高く評価できる。
 なお、授賞の対象となった業績は下記の通りである。




1) K. Suzuki, et al.: Preparation of Crystallized and Mesoporous Carbon by Nickel-Catalyzed Carbonization of Wood, Chemistry Letters, 34 (6), 870-871 (2005)
2) T. Suzuki, K. Suzuki, et al.: Nickel-Catalyzed Carbonization of Wood for Coproduction of Functional Carbon and Fluid Fuels I: Production of Crystallized Mesoporous Carbon, J. Wood Sci., 53, 54-60 (2007)
3) 鈴木京子他:機能性炭素と流体燃料の併産を目的とする木材のニッケル触媒炭化‐二段炭化による結晶性メソ孔炭素の製造、材料、56 (4), 339-344 (2007)
4) K. Suzuki, et al.: A Unique Shape of Nnocarbon Produced by Nickel-Catalyzed Carbonization of Wood, Proceedings of Carbon 2007, Seattle, Washington, USA, July 15-20, 2007, P073
5) K. Suzuki, et al.: Crystallinity and mesoporosity of carbon produced from ligno-p-cresol and their improvement by pulverization and acid treatment, Holtzforshung, in press.
以上


平成19年10月26日
日本材料学会木質部門委員会

委員長 湊 和也