平成20年度日本材料学会木質材料部門委員会業績賞
授賞理由


授賞対象者 :京都大学大学院農学研究科森林科学専攻  宮内 一成 氏

授賞研究課題:画像相関法による木材および木質材料の応力-ひずみ関係の基礎的な解析法およびその応用に関する研究

 
宮内氏は木材の異方性および不均一性がどのように巨視的な応力―ひずみ関係に反映するかについて画像相関法を用いて解析し,新たな知見を得た。また,基礎的な応力―ひずみ解析の手法を,伝統的木造建築に多用される蟻継手などの接合部における応力―ひずみ解析に発展させ,接合部の形状と強度的な性質の関係を詳細に検討した。今後こうした研究がさらに発展することにより,木材の微視的な組織構造が応力―ひずみ関係にどのように反映されるか十分に解明されることが期待される。また,こうした微視的な組織構造と巨視的な応力―ひずみ関係の関連が明らかになれば,たとえば構造用の木質材料に内在する微細なレベルの破壊を検知して,構造物の致命的な破壊を防止することが可能となると思われる。また,木材の微細な応力―ひずみ関係を考慮した上で新たな木質材料の製造法につながることなどの点でさらに発展すると思われる。その成果は過去3年間に、“材料”を含む学会誌に発表するとともに、国際学会でも発表しており、木材と木質材料の応力―ひずみ関係の基礎的解析ならびにその応用研究を行った点で高く評価できる。
 なお、授賞の対象となった業績は下記の通りである。




(1) 宮内一成,増田 稔,村田功二,“画像相関法による真の横引張応力-ひずみ関係の究明”,第49回日本学術会議材料研究連合講演会講演論文集,485-486, 2005.
(2) 宮内一成,増田 稔,村田功二,“画像相関法による伝統的蟻継手のひずみ分布解析”, 材料,55 (4), 367-372, 2006.
(3) 宮内一成,村田功二,仲村匡司,“木材の横引張応力-ひずみ曲線の非線形性”,第55期日本材料学会学術講演会講演論文集,363-364, 2006.
(4) 宮内一成,村田功二,仲村匡司,“横引張における木材のsoftening挙動と応力-ひずみ曲線の導出”,第56回日本木材学会大会研究発表要旨集, 30, 2006.
(5) Miyauchi K, Murata K. “Strain-softening behavior of wood under tension perpendicular to the grain”, J Wood Sci, 54 (6), 463-469, 2007.
(6) 宮内一成,村田功二,中野隆人,“不均一な応力場を考慮したせん断応力-ひずみ関係の考察”,第57回日本木材学会大会研究発表要旨集, 19, 2007.
(7) 宮内一成,村田功二,中野隆人,JISいす型試験とIosipescu試験で得た木材のせん断応力−ひずみ関係の比較“第51回日本学術会議材料工学連合講演会講演論文集,165-166, 2007.
(8) 宮内一成,村田功二,中野隆人,木材の静的せん断特性に及ぼすひずみ速度の影響第58回日本木材学会大会研究発表要旨集,20, 2008.
(9) Miyauchi K, Murata K, Nakano T. “Determination of the complete stress-strain relationship of wood under radial tensile and longitudinal shearing loads”, Proc 10th World Confer Timber Eng, Miyazaki, Japan, 2008.
以上

平成21年1月16日
日本材料学会木質部門委員会
委員長 岡本 忠