平成25年度日本材料学会木質材料部門委員会業績賞
授賞理由


授賞対象者 :京都大学生存圏研究所  森 拓郎 氏

授賞研究課題:既存木造建築の耐震性能の評価のための生物劣化部材および接合部の強度性能に関する基礎研究

森氏は,特に木造建築物の長期利用を検討する中で重要と考えられる既存の木造建築物の耐震性能評価のための生物劣化を受けた部材および接合部評価について多数の研究を実施し,日本材料学会をはじめ,日本木材学会,日本建築学会などに多数の研究発表・報告を行っている.これらの成果により,「木造長期優良住宅の総合的検証委員会耐久性分科会」に委員として参加し,部材や接合部の生物劣化と強度の関係について様々な検討を行ってきている.しかし,既存の木造建築における性能評価は大変難しく,まだ確立できているとは言い難いが,森氏の研究と同様の研究が多く実施されることにより,データが蓄積され,また実際の木造建築物における生物劣化状況の把握が進むことにより,この問題の解決に近づくと考えられる.森氏の業績は,より安心・安全で信頼性の高い木造建築の維持において重要な取り組みであり,木質材料のより精緻な評価の確立に寄与するものである.
 以上の点を鑑み,平成25年度の日本材料学会木質材料部門委員会業績賞を授与することに決定した.
 なお,授賞の対象となった業績は下記の通りである.


1) 森 拓郎,梅村研二,笹田雅彦,則元 京:竹繊維を用いた木質構造用ドリフトピンとプレートの開発,材料,Vol.57,No.4,pp.328-332, 2008.
2) 森 拓郎,中谷 誠,小松幸平:雄ネジタイプのラグスクリューボルトを用いた一方向ラーメンフレームの開発,構造工学論文集,55B,pp.213-218, 2009.
3) 渡辺 浩,森 拓郎,小松幸平,佐久間太亮:スギ集成材と添え板鋼板による単位ボルト接合部の繰り返し載荷実験,木橋技術に関するシンポジウム論文報告集,Vol.8,pp.29-36, 2009.
4) 北守顕久,鄭 基浩,森 拓郎,小松幸平:圧縮木材の力学的特性の圧縮率依存性,木材学会誌,Vol.56,No.2,pp.67-78, 2010.
5) 森 拓郎,香束章博,簗瀬佳之,小松幸平:シロアリ食害材の強度特性と密度および超音波伝搬速度の関係,材料,Vol.59,No.4,pp.297-302, 2010.
6) 簗瀬佳之,森 拓郎,藤原裕子,南 宗和:日本におけるアメリカカンザイシロアリの木造住宅被害の調査研究-木造住宅の被害程度と被害木材の残存耐力評価-,住宅総合研究財団研究論文集,No.38,pp.245-256, 2012.
7) 森 拓郎,足立幸司,梅村研二,山内秀文,矢野浩之:集成材強度の変動係数低減のための木質シート補強方法の提案,材料,日本材料学会,Vol.61,No.4,pp.347-352, 2012.
8) 南 宗和,鄭 基浩,北守顕久,森 拓郎,小松幸平:長尺帯金物を用いた厚板工法による耐力壁の開発,日本建築学会技術報告集,日本建築学会,第18巻,第39号,pp.511-516, 2012.
9) 野田康信,森 拓郎,小松幸平:フィンガージョイント接合部の性能,材料,日本材料学会,Vol.62,No.4,pp.274-279, 2013.
10) 森 拓郎,簗瀬佳之,田中 圭,河野孝太郎,野田康信,森 満範,栗崎 宏,小松幸平:生物劣化を受けた木材の曲げ及び圧縮強度特性とその劣化評価,材料,日本材料学会,Vol.62,No.4,pp. 280-285,2013.

以上

平成25年11月1日
日本材料学会木質部門委員会
委員長 中野 隆人