平成23年度日本材料学会木質材料部門委員会業績賞
授賞理由


授賞対象者 :独立行政法人産業技術総合研究所  三木 恒久 氏

授賞研究課題:木質材料の変形加工と熱分析を用いた木材の微細構造変化の評価

三木氏は、木粉を利用した低バインダでの各種成形技術による成形体製造および成形体の物性向上のため木粉の蒸煮や乾燥工程での処理を検討した。その結果、蒸煮によりリグニンやヘミセルロースが十分に軟化し、より低圧・低温度条件で物性向上と各種形状の成形体製造が可能になることを示した。 DSCやTMAなどの熱分析の手法を用いて、非平衡状態にある木材の微細構造と物性の変化について検討を行い、上述の挙動が木材の微細構造の変化に深く関係することを明らかにした。さらに、これまでに報告されている“木材の不安定状態" について熱力学的考察を行うなど、学術的に有用な知見を示した。また、非平衡状態にある木材は外力に対する低抗が著しく低下することに着目して、バルク状木材においても細胞界面すべりによって圧縮大変形を生じさせることができることを見出し、これを成形加工へ展開する研究を行った。 以上のように、木材の微細構造と物性に関する基礎的知見さらにその応用として木粉およびバルク木材の成形体製造技術の開発など、近年持続可能なカーボンニュートラル原料として注目されている木材の工業原料としての利用に向けて、三木氏の貢献は多大なものであり、その業績は高く評価できる。
 なお、授賞の対象となった業績は下記の通りである。


1) 三木恒久,杉元宏行,神代圭輔,金山公三,古田裕三,大越誠,105〜180℃の温度域における木材の吸・発熱および動的粘弾性挙動に及ぼす乾燥保持時聞の影響,材料,60巻,4号,pp.300-305,2011
2) Tsunehisa Miki,Hiroyuki Sugimoto and Kozo Kanayama,Deformation Behavior of Natural Wood Having Hierarchical Structure Under A Compression State,2010 MRS Fall Meeting Proceedings, Vol. 1304, mrsf10-1304-z10-05, 2011
3) T. Miki, K. Takeuchi, H. Sugimoto ,K. Kanayama, Material development from wood powder without adhesive by vapor steaming compaction process,Journal of Materials Processing Technology, 199(1), pp.396-401, 2008
4) T. Miki,K. Takeuchi, H. Sugimoto,K. Kanayama,Performance Study of compact wood powder material processing for improved impact characteristics aiming at substitute for plastics, Journal of Materials Processing Technology, 192-193, pp.422-427, 2007
5) T. Miki,O. Yamashita,H. Sugimoto, K. Kanayama, Novel Wood Forming Processing Using Shear Flow Phenomenon, Proceedings of the 8th International Conference of Eco-Materials, 1. pp.177-180,2007
6) T. Miki,H. Sugimoto, K. Kanayama,Thermoplastic behavior of wood powder compacted materials,Journal of Materials Science, 42(18), pp.7913-7919, 2007

以上

平成23年11月16日
日本材料学会木質部門委員会
委員長 大越 誠