平成24年度日本材料学会木質材料部門委員会業績賞
授賞理由


授賞対象者 :京都大学大学院農学研究科  仲村 匡司 氏

授賞研究課題:木質感に関与する画像的要因の抽出と表現に関する研究

仲村氏の研究領域は、「木質感に関与する画像的要因の抽出と表現」に関わるものである。木材の表面には生物材料特有の意匠が現れ人の生活に彩りを与える。このことは、例えば力学的特性と同様に重要な木材の性質であるが、定量的に取り扱われた例は少ない。上に記載した中村氏の最近の研究業績に関してその概略を説明すると以下の通りである。 材面に現れる特徴を色彩、パターン、光沢の3種類に大別し、それぞれに画像工学的手法を適用して、人の主観的な印象と対応する画像的要因の抽出と量的表現を試み、材色測定に木材分野で初めて色彩について面的測定法を導入し、二次元的な木材色分布の特徴を量的に示した1)。さらに、パターンについてまさ目模様の特徴をコントラストという新規な指標で表現し,観察者の印象との対応関係を示し2)、有節パネルを観察する被験者の視線を追跡して,節が誘目性の極めて高い特徴であることを客観的に示した6, 8)。さらに、光沢についてこれまで変角光沢測定でしか捉えられなかった木材の光反射異方性を画像で捉え、材の光沢特性を量的に明らかにした4)。これらは、いわば「木材の見え」を数量として取り出して人の主観と結びつけるアプローチである。仲村氏は上記の研究を展開するとともに、内外で同種の試みがどのように行われているか整理し3)、得られた知見をものづくりにどのように展開すべきかを検討した7)。  仲村氏の研究業績は基礎から応用にわたる幅広い領域を網羅しており、加えて、木材材料部門の新たな研究領域を創生するものである。上記理由から、氏の業績は木質材料部門業績賞に十分値するものと判断し、ここに推薦するものである。
 なお、授賞の対象となった業績は下記の通りである。


1) 田代智子,仲村匡司:イメージング分光法による材色分布の特徴抽出、材料、受理(2012/10/19)
2) Nakamura, M., Miyake, Y., Nakano, T.: Effect of image characteristics of edge-grain patterns on visual impressions, Journal of Wood Science, DOI 10.1007/s10086-012-1284-4 (2012)
3) 仲村匡司:木材の見えと木質内装、木材学会誌、58 (1)、1-10 (2012)
4) 佐藤舞葉,仲村匡司:ヒノキまさ目面の光沢特性:変角光沢測定と画像解析の対応、材料、60(4)、282-287 (2011)
5) Nakamura, M., Matsuo, M., Nakano, T.: Determination of the change in appearance of lumber surfaces illuminated from various directions, Holzforschung, 64 (2), 251-257 (2010)
6) Nakamura, M., Kondo, T: Quantification of visual inducement of knots by eye-tracking, Journal of Wood Science, 54 (1), 22-27 (2008)
7) Nakamura, M., T. Fuwa, K. Inoue, F. Iwasaki, S. Kudo, H. Sako, M. Sato, Y. Shimomura: Prospect of Manufacturing and Designing Based on Physiological Polymorphism, Journal of Physiological Anthropology, 26, 507-511 (2007)
8) Nakamura, M., Kondo, T: Characterization of Distribution Pattern of Eye Fixation Pauses in Observation of Knotty Wood Panel Images, Journal of Physiological Anthropology, 26, 129-133 (2007)

以上

平成25年1月28日
日本材料学会木質部門委員会
委員長 中野 隆人